ロシア内戦突入か? ワグネルのプリゴジン氏〝武装蜂起〟宣言と日本が直面する「最悪シナリオ」

取得元:https://www.appbank.net/2023/06/24/technology/2497321.php

ロシアの民間軍事会社「ワグネル(Wagner)」創設者であるエフゲニー・プリゴジン(Евге́ний Приго́жин/YevgenyPrigozhin)氏が「ロシア軍指導部の打倒」を宣言し、ロシア南部で進軍を開始したと報じられています。

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ロシアは内戦状態

現状、ロシアは「非正規軍 vs 正規軍」という構図で、実質的内戦状態へと向かっています。プリゴジン氏は「ワグネルの基地がロシア正規軍によってミサイル攻撃を受け、我々の部隊に死者が出た」と主張しているとの報道もあり、ソーシャルメディアには真偽不明の「炎上する基地らしき場所」の映像が出回っています。

ワグネル創設者、ロシアに進軍と表明 ウクライナから南部へ部隊

ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は24日、通信アプリ「テレグラム」に音声を投稿し、ワグネルの部隊がウクライナから国境を越え、ロシア南部ロストフに入ったと表明した。同氏は、部隊の進路を妨げるものは誰であろうと撃破すると述べ、ロシア軍に「徹底的に」対峙する用意があると発言した。

出典: ロイター(2023年6月24日9:19 午前)

プリゴジン氏は、もともとプーチン大統領の引き立てがあり頭角を表した人物です。そのため、慎重にプーチン氏への攻撃を避けているように見えます。

NHKの報道によれば、プリゴジン氏は「国防省は社会や大統領を欺こうとしていると述べているそうで「プーチン政権が軍事侵攻を正当化するために主張している、ウクライナ東部のロシア系住民への弾圧やNATOからの軍事的な脅威などとは『全く違う理由で、いわゆる特別軍事作戦が開始された』」と持論を展開しているとのこと。

あくまで「悪いのは軍や政府で、プーチン大統領は半ばダマされて誤った戦争に引っ張られたのだ」といわんばかりの主張です。プリゴジン氏とて、いち傭兵部隊でロシア全土を掌握できるとは考えておらず、プーチン大統領を担ぐことで正規軍にとって代わることを目指していることがうかがえます。

ロシア政府の「公式」見解

CNNは首都モスクワに軍事車両が展開する様子を報じています。


ワグネルとプリゴジン氏の反乱に対してロシア政府は「プリゴジン氏の発言は事実上、ロシア連邦領内での内戦の呼び掛けであり、親ファシストのウクライナ軍と戦っているロシア軍への裏切り行為である」と発表し、プリゴジン氏の拘束に向けた動きを開始しました。

ワグネル創設者が「内戦」扇動 ロシア当局、拘束呼び掛け

ロシア連邦保安局(FSB)は24日、ロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)の創設者エフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏が「内戦」を扇動していると非難し、同氏を拘束するようワグネル戦闘員に呼び掛けた。

出典:AFPBB(2023年6月24日9:21 午前)

ワグネルの反乱は今後どうなるのか?



ワグネルは百戦錬磨の特殊部隊や〝囚人あがり〟の獰猛な兵士をそろえていますが、兵器や弾薬の質や量、そしてなによりインテリジェンス面においてロシアの正規軍に太刀打ちすることはできません。そのため、直接的な軍事衝突となった場合はワグナーとプリゴジンが戦闘に勝利することはあり得ないでしょう。

しかし、いくつかの不確実性があります。確率が高いとは言えないものの、可能性としては下記のシナリオが挙げられるでしょう。

  1. プーチンが戦果をあげられない正規軍をみかぎり、ワグネルとプリゴジン氏を支持する
  2. プリゴジンに共感した正規軍の兵士がワグネルに寝返る
  3. ワグネルとプリゴジン氏やウクライナ(とNATO)と連帯する

上記の3シナリオは荒唐無稽にも思えるものですが、わずか数年前までは「ロシアがウクライナと全面戦争をすることなどあり得ない」という予測が専門家の一致した見解であったことを踏まえると、今回も予想外の展開が起きる可能性を完全に排除することはできないでしょう。

※24日19:00追記:プーチン大統領は「ワグネルの武装蜂起は国家への反逆」とする演説ビデオメッセージを配信しました。ロイターなどが報じています。このことから上記の(1)説は消えたとみて良いでしょう。また、ワグネルが容易にロシア南部のロストフ・ナ・ドヌを掌握したように見えることから、正規軍の一部がプリゴジン派に寝返りつつある可能性は高そうです。

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日本へも危機が波及する最悪シナリオ

ロシアが内戦に陥ることは、短期的にはウクライナやNATO、そして欧米と足並みをそろえる日本にとってはプラスの出来事です。

しかし、最悪のシナリオは内戦後に安定した政府が樹立されることなく、ロシアが分裂状態になることです。「弱体化し分裂したロシア」がもはや軍事的脅威ではなくなるという意味で、このシナリオはプラスにも思えますが、その先にある最大の危機は核兵器の拡散です。

ロシアは2020年1月時点において6375発の核兵器を保有する世界最大の核大国です。そして、このうちの1発でもテロ組織や〝ならずもの国家〟手に渡れば、世界の安全を脅かす危険性があるのです。



また、ロシアと国境を接する中国や北朝鮮にとっても「ロシア内戦と分裂後の核拡散」は深刻な脅威であることから、隣接するロシア領が制御不能な状態に陥った場合は何らかの介入を行なう可能性があります。ロシアの混乱と弱体化に乗じて「漁夫の利」を得ようとする国が出ないとも限らず、その場合に北方領土問題を抱える日本は準備不足のまま軍事的な対立に引き込まれてしまうかもしれません。

かつてプーチン大統領が盤石の政権基盤を有し半ば独裁的にロシアに君臨していた状態は、核拡散の防止という意味では安定した時代でした。しかし、もし今後プーチン氏の権力やロシアそのものの統治がゆらぐことになれば、膨大な量の核兵器の拡散という前代未聞の脅威に日本や隣国、そして世界が直面することになるのです。


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